ペニオク詐欺と競馬の騎手の物語

三河皇成は憂鬱だった。

 

昨年末の浮気現場スクープには参った。あの女子大生は写真誌の仕込みに違いない。ハメるつもりがハメられた。

 

さらに三河皇成はイラだっていた。

 

嫁のほしのあ●のペニオク詐欺事件だ。

 

ほしのあ●は以前ブログで、人気商品の空気清浄機「プラズ●クラスター」を1080円で落札したように見せかけ、謝礼として30万円を受け取っていた。

これが詐欺ほう助にもなりかねない行為と報道され、事の重大さに気づいて昨年暮れにブログで謝罪したが、事務所から謹慎を言い渡されていた。

 

元師匠の河野通●調教師(当時)も、暴力団絡みの詐欺事件に関与していたとして調教師免許はく奪されたし、どうして俺の周りには詐欺が多いのだろう?

 

ほしのあ●がブログで謝罪して以来、三河皇成は名古屋日刊スポーツ杯での勝利を最後に現在38連敗中だった。

 

2年8カ月にわたり掲載してきたスポーツ紙のコラムも打ち切られた。

 

だいたい浮気も俺が悪いんじゃない。別居していて事実上の離婚状態なんだし、たまに一緒にいる時も腹が減ったからと俺にハンバーガーを買いに行かせるような嫁だ。お前がメシ作れっつーの!

 

そもそも周りの反対を押し切ってまで結婚なんてするつもりじゃなかったんだ。

 

「アスリートは姉さん女房がいいのよ」なんてピロートークには騙されなかったけど、「今日は安全日よ」を信じて中田氏したらデキ婚する羽目になってしまった。

 

付き合った当初は好きなグラドルだったけど、さすがに13歳上は劣化が早い。

 

しかも、自慢のバストの形が崩れるからと妊娠後はずっとセックスレスだった。

 

俺だって健康な若い男子だ。外で発散するしかないじゃないか!

 

くそう、こんな気分で新年を迎えるなんて。せっかくの年男なのに。

 

ダメだ。切り替えなきゃ。明日から正月競馬だ。今夜は早く寝なきゃいけない。

 

三河皇成は、独り寂しくベッドに入った。

 

 

一方、ほしのあ●は焦っていた。

 

今春ベビー用品をプロデュースする計画が進んでいたが、それを見直さざるを得ないと事務所に通告されたからだ。

 

「私も詳しいことは知らなかったんです。友達に頼まれて……」

 

電話の相手は、芸能界で一大勢力を誇るママ友軍団のボス・神田う●であった。

 

芸能人がサイドビジネスで成功したかったら、神田う●に話を通すのが掟だ。

 

「あなたねえ、芸能人がオークションで空気清浄機を買うなんて聞いて呆れるわ。だいたいペニーって1セント銅貨でしょ。チップにもならないわ。セレブがオークションって言ったら美術品なの。うちの空気清浄器はプラチナカードで買った最高級品よ」

 

「それはう●さんみたいなセレブの中のセレブはそうでしょうけど……」

 

歯切れ悪くそう言い返しながら、ほしのあ●は最近稼ぎが悪い夫のことを恨めしく思っていた。

 

「芸能人ブランドなんてイメージがすべてよ。旦那さんの記事も聞いたわ。あなたは失格。ベビー用品ブランドの話はもう私にしないで。さようなら」

 

「う、う●さん・・・」

 

ブチッと非情にも電話は切られた。

 

ダルビッシュから計4億円以上の養育費をむしり取ったママ友の紗栄●が羨ましい。

 

(新人賞を獲って「武豊2世」と言われていたから付き合ったのに、とんだ見込み違いだったわ……)

 

このまま旦那の成績がジリ貧だったら離婚しても養育費が期待できないから、ダイエット本を出版したり、ブログで商品宣伝してきたのに……

 

ほしのあ●の過去のブログを見直すと、昨年12月だけでも、化粧品(美容ゲル)、育児CD、ヨーグルト、洗剤、柔軟剤、高濃度水素水サーバー、と出るわ出るわ……

 

果たしてメーカー側からいくらのマージン(広告料)があったのだろうか?

 

ステマ怖い!

 

ほしのあ●も、最近まで離婚までは考えていなかった。

 

結婚前から三河皇成が合コン好きという噂は知っていたし、13歳も年上の自分を嫁にしてもらうんだ。多少の女遊びには目をつむる。それくらいの余裕はあった。

 

でも、年下のボクちゃんなんか巨乳を武器に簡単に悩殺して玉の輿の座をゲットしたと思っていたら、稼ぎは伸び悩んでるし、思っていた以上の浮気男だったのだ。

 

子どもが生まれてママドルとして売り出すのにはイメージが大事だ。

 

流行りのキラキラネームを名付けたかったけど、責任感を持ってもらうために命名権は旦那に渡した。

 

なのに浮気が治まるどころか、写真誌にスクープされるなんて……

 

世間では、一緒に住んで旦那の面倒を見ないほしのあ●が悪いという声もあるのも知っていた。

 

でも、茨城のトレセンに住むなんて冗談じゃない。口うるさい姑と一緒に、朝早い生活なんてまっぴら。私はママ友と夜遊びするのに忙しいのよ。

 

子どもは親に面倒見てもらってるから大丈夫。私は育児よりも自分のくびれの方が大事なの。

 

(そろそろ潮時かもしれないわね。ダイエット本の印税次第では、本気で離婚を考えなきゃ)

 

産後ダイエット本は、産後数カ月でこんなにウエストのクビレが戻ったという強烈なアピールになり、ダイエットに興味のある女性への訴求力が高いのだ。

 

本当は産後ヌードも考えていた。

 

時は産後ヌードブーム。ほしのあ●のところにもオファーがあり真剣に考えたが、お笑いの山田花子の産後ヌードまでが雑誌に載ったのを知って「同列に扱われたくない」と思いとどまったのだ。これも彼女のプライドだ。

 

ほしのあ●は再び電話を手にした。

 

「もしもし、紗栄●ちゃん、慰謝料の獲り方について相談したいんだけど……」

 

 

ここは中山競馬場。

 

2013年1月5日。今年の初重賞・金杯を楽しみにつめかけた熱心な競馬ファンで、パドックは溢れかえっていた。

 

いよいよメインレース。

 

周回する金杯の出走各馬に、

「止ま~れ~」

係員の号令がかかり、騎手が整列した。

 

ほどなくして、三河皇成はシンゲ●号にまたがった。

 

「重賞だと三河は空気!」

 

すかさず誰かが口火を切った。

 

後はとどまることなく野次が飛んだ。

 

「嫁の手綱握るのも下手糞!」

 

「女子大生に騎乗するのは上手いなあー!」

 

「お前のペニオ君も黙ってなかったんだなー!」

 

「ユルシテホシーノ!」

 

「さげまんの女房をもらうと大変だなあー!」

 

まだパドックだというのに、三河皇成はゴーグルをかけた。涙目を隠すために。

 

続いて一際大声の野次が飛んだ。

 

「さげまんじゃねーよ、「詐欺まん」だ!!」

 

そうか、謎が解けた。俺の周りで詐欺事件が多いのは、嫁がさげまんじゃなくて「詐欺まん」だからなのか……

 

それに気付いた三河皇成は、鞍上でついに離婚を決意した。

 

―了―

 

※この物語はフィクションです。

 

ほしのあきさん、岡本夏生のように芸能界でたくましく生き抜いてください。

 

三浦皇成騎手、離婚する際は親権取りましょう。子連れバツイチジョッキーの看板掲げて精進してください。

 

<参考>

ほしのあきオフィシャルブログ http://ameblo.jp/hoshino--aki/

NEWSポストセブン「三浦皇成 誕生日パーティーで妻・ほしのではない女性と密着」 http://www.news-postseven.com/archives/20121225_162869.html